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吉良家と浅野家の塩戦争

今日のように歯磨剤が存在しなかった時代は、楊枝をかむことが、歯みがきに代わる方法だったと考えられている。

歯をみがく習慣

歯をみがく習慣は、仏教の伝来と共に仏前にぬかずく前に菩提樹の木枝の一端を噛み、房状にして口を清めたことから始まり、後世に至って歯を白くしたり、口臭やムシ歯を防ぐために、塩や歯磨粉が用いられるようになった。

江戸時代の歯磨

歯が真っ白でなければ一人前でないといわれたのが、いなせな江戸っ子。歯磨粉を使うか、使わないかで、江戸っ子か、田舎者かが判るぐらいだったそうである。歯磨粉の原料や製法は青竹の筒に「塩」をつめて焼いて砕いたり、松葉に「塩」を加えて黒焼きしたものを使っていた。 歯磨粉が商品化されたのは、江戸時代に入ってからで、その多くは、房州砂(砂ではなく石灰の粉末)を原料に竜脳、丁子、白檀などの香料を加えたものであった。歯磨粉は、文化、文政の頃には、その数は100種類に及び、宣伝合戦も激しいものだったという。当時は歯磨粉を箱に入れて担いで売り歩く歯磨売りがおり、色々な芸を見せて人集めをした。居合抜きや笑う目、泣く目、腹立つ目、など目つきを変え、変装して見せる一種の寄席芸で「百眼米吉」と呼ばれた。歯磨粉売りは紺の香高き、腹掛け、、股引きの上に童子格子の絞りの浴衣を重ねたものを着て、七三に尻からげの突掛け草履という、いなせな扮装で江戸町内を売り歩いていた。また当時は店を構えて店売りもあり、現在のちらしのような物を配って大いに宣伝した。文化八年に発行された買物便覧東都土産には、袋入れに「歯を白くする、口中悪しき香を去る」と効能が記されている。

歯みがき剤の歴史の主人公は「塩」

歯みがき剤のおもしろ話 「我国最初の歯磨剤は塩であった」
文献から推察すると我国で最初の歯磨剤は塩であったと考えられる。ヨーロッパ、中国といえば岩塩が主であったけれど我国では岩塩は、産出しない。「神代記」には、伊非諾命の頃に「海水をいり塩を造る」とあるくらいで我国の塩は海水から得ていたのである。奈良時代(710年から794年)には瀬戸内海沿岸で精塩が行なわれていた。

名塩「赤穂の塩」といえば歯磨用焼塩

昔からの塩も工夫され、商品として売られていた焼塩である。塩を壷に入れて焼いたもので、そのまま使うものと売りやすくするため焼塩を型に入れ固めたものが売り出されていた。徳川家康が江戸に入府したときに、江戸庶民の為に塩田(千葉県行徳)を拡張して供給させたが、徳川家の使用する塩は三河吉良(静岡県吉良市)吉良上野介義央の所領から献上する饗庭塩が使われ、江戸の一流の町人や有名料理屋などもこの塩を使っていたという。さて、正保2年(1645年)浅野長友は常陸笠間で五万五千石を領していたが嫡子長短のとき藩州赤穂に転封になった山国の大名が海に面した領地に行くに際して、藩の経営をどうしたらよいか苦慮した結果、三河吉良の庄に家来を送り吉良家の精塩法を習い赤穂の塩田の開発に努力した結果、赤穂の塩は品質、味、共に良いと評判を得て、大阪、京都、堺など名声を博して食用以外に歯磨用焼塩をつくり売り出した。当時将軍は毎朝七時に寝所を出る。そして御手水の間で畳の上に「毬子」を敷いた上に座って顔と歯は自分で洗った。歯は奥詰口中医<「赤穂の塩」と「吉良の塩」は歯磨剤の分野で商売仇となる。>の調合した歯磨粉、焼塩、細紛した松脂の三種類を小皿にのせたものを、その時の気分で好きなものを選んで房楊枝につけて磨いた。その後、髪を結い袴をつけ仏間を拝し朝食をとった。この将軍が使う焼塩として赤穂の塩が五代将軍綱吉に献上されるに及んで江戸でも有名なブランドとなった。赤穂の塩がお上御用達となると、困ったのは、行徳と吉良の塩である。行徳の塩はまだ江戸庶民用だから問題はないが吉良の塩は焼塩として歯磨用に使われていたので、赤穂の焼塩、塩の進出は商売仇の出現を意味した。このような状況下で元禄十四年浅野長短に二度目の勅使接待役が廻ってきた。この接待役の指導にあたるのが吉良義央であった。両家に経済上の対立があるとき、吉良の浅野に対する感情は徒ならぬものがあり何か触発するものがあると不慮の事態を引き起こすことは、至極当然である。元禄十四年三月十四日 巳の刻(午前十時半)殿中、松の廊下で浅野長短が吉良義央に刃傷に及んだ。後日、元禄十五年十二月十四日赤穂浪士の吉良邸討入りがあった。その中に加わっていた堀部安兵衛、大高源五らが歯磨粉や歯磨用焼塩を商った有名な芝の兼康祐見の看板を書いたり大高源五の弟である口中医の小野玄人の金看板を書いたのも何か因縁があったのかも知れない。

参考文献 東京歯科大学名誉教授 長谷川正康著
「歯科の歴史おもしろ読本」

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