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かむ力が極端に低下した現代人

歯が抜けることで見過ごしにできないのがかむ力です。歯がもっている本来の正常な力は、成人男性で60kg、女性なら40kg以上です。よくサーカスなどで、ロープの先をくわえて重いものをぶら下げる芸を見ますが、あれほどではありませんが、私たちも、じつは相当な力をもっているのです

ところが、詰めものをしている歯や総入れ歯になると、残念ながら100%の力でかむことができません。たとえば奥歯がなくなると、健康な状態の歯の49%、冠を入れると81%、ブリッジを入れると90%、総入れ歯では30%しかかむ力がなくなります。

このほか、総入れ歯になると、食べものの味が変わる、食べものの温度がわかりにくくなる、発音がしにくい、口元が老けて見えるなどの問題もでてきます。そして、たとえ歯がそろっていても、現代人は50年ほど前とくらべると、かむ力が三割ほど弱くなっているというデータもあります。

その原因は、あごの力を必要としない食生活にあります。あごの筋力の発達は20歳ころがピークで、40代後半から急激に衰えていきます。あるテレビ番組が50人の街頭調査をした結果、本来は60kgの力があるはずの男性の平均値が49kg、40kg以上はあるはずの女性の平均値は28kgという結果でした。

ちなみに、私たちが物を食べているときの力は、おせんべい:10kg以上、食パン:30kg以上、きんぴらごぼう:10kg以上、いわしの丸干し:20kg以上、ハンバーグ:約2kg、ラーメン:約1kgになっています。

かむ力が低下した原因のひとつに、昔ながらの和食が減ったことがあります。和食では一食当りのかむ回数が1000回を越えるのに対し、現代の食事では約560回と半減しているそうです。それからもうひとつの大きな原因は硬いものを食べなくなったことにあります。
最近の子どもに人気のメニューは、カレー、スパゲッティ、オムレツ、ハンバーグなど、ほとんどかまなくていいものばかりです。手間のかからないこれらのメニューのことを、食事の準備に手を抜くお母さんをちょっと皮肉って、「おかあさんやすめ」というそうです。

つまり、お:オムレツ、か:カレーライス、さん:サンドイッチ、や:やきそば、す:スパゲッティ、め:目玉やき、というわけです。軟らかい食事はあまりかまなくてもすぐに飲み込めます。ですから、自然にかむ回数が減り、かむ力も弱くなってしまいます。

食べもののせいで歯がしなければならない仕事が極端に減ってしまっているのです。歯の健康、ひいては私たちのからだ全体を健康にするには、もっとかまなければいけません。そして、かむ回数を増やすためには、もう少し硬い食べものや繊維に富んだ食べもの、それに弾力のある食べものなどを摂る工夫をする必要があるのです。いくつかのヒントをあげておきましょう。

(ここがポイント)

1)具はできるだけ大きく切る
たとえば、カレーの具はひと口大の大きさにします。また、スパゲッティの場合、イカ、エビ、貝などのシーフードを入れるなら、それらを大きめに切って入れ、かみごたえのあるようにつくりましょう。

2)繊維質の多いものを使う
豆類、海藻類、芋類、野菜などの繊維質が多いものを食材として使うと、かむ力が鍛えられます。

3)なるべく薄味にする
薄味にすると、素材の味をよく味わおうとするために、かむ回数が自然に増えます。

4)水分を減らす
食品は水分が少ないほうが硬くてかみごたえがあります。揚げたり、焼いたりすると加熱で水分が減ります。

5)素材を組み合わせる
ひとつの料理に複数の素材を組み合わせると、一種類の素材でつくったものよりかむ回数が増えます。芋を使った煮物をつくる場合、根菜類や肉などを組み合わせると、芋だけの煮物よりかみごたえが増します。

歯によい食事は「おかあさんだいすき」

「おかあさんやすめ」という手抜き料理のことをお話ししましたが、ここでは、丈夫な歯をつくる「おかあさんだいすき」献立を紹介します。

お:おから
か(あ):かきあげ
さ(ん):サンマの塩焼き
だ:大豆の五目煮
い:イモの煮っころがし
す:酢の物
き:キンピラゴボウ

どれも、俗にいう「おふくろの味」で、繊維を含む野菜や良質のたんぱく質が豊富です。丈夫な歯を育て、歯と口の健康を維持するために必要な要素がそろっています。ここでもうひとつ、野菜の効用について付け加えておきましょう。

大阪の岡崎卓司博士は、歯科医としての体験から「歯を丈夫に保つには野菜を多く食べることが必要だ」と提唱しています、アメリカ歯科医師会の国外会員でもある岡崎博士は、アメリカで、セロリやにんじんがむし歯予防に効果的だといわれていることを報告しています。

これは水に溶けない食物繊維であるセルロースが、かむときに歯を清掃し、しかもよくかむことで弱アルカリ性の唾液がよくでて、むし歯菌がつくる酸を弱める働きをするからです。この野菜の効用をいかして、積極的に丈夫な歯を育てましょう。

そしておやつにも気をつけてあげてください。果実を入れたプレーンヨーグルトなど、砂糖を使っていなくても子どもが喜ぶおやつはたくさんあります。「一週間に二度、あるいは土曜だけ」とか「おでかけしたとき」とか、条件を決めて子どもの好きな甘いものを食べさせるようにすれば、だらだらと食べさせるよりもずっと喜ぶのではないでしょうか。

(歯と口の悩みを解決する本 著者:坂本歯科医院院長 坂本貴史)

 

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E-Mail: takafumi@sakamoto.or.jp

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