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草食動物の消化システムと歯

某動物園の元園長先生から草食動物の糞の標本をいただいた。ゾウ・キリン・シマウマの糞を十分乾燥させ,表面をクリアラッカーでコーティングさせたものである。

これを利用し小学校で歯の授業を計画した。肉食動物がいないのでトラを加え,それぞれの動物と糞の写真を集めクイズにした。さて,動物と糞に線を引いていただきたい。
画像はこちら↓:
http://www.dent.okayama-u.ac.jp/syouni/OKAZAKI/omosiro/hun/hun.html

まずBの糞には,草が含まれていないのでトラだとわかる。ちなみに肉食動物の糞は,黒くて臭いそうだ。ゾウは,1日200キロもの植物を食べるという。だから糞が大きいのですぐ分かる。ずいぶん未消化物も多いようだ。

さて,ここからが難しい。シマウマとキリンの糞の差である。両者とも草食動物だ。よくわかるように両者の乾燥標本の糞を眺めてみよう。アの糞は,小さく未消化物は少ない。一方,イの糞には未消化物が多いこと。未消化物の少ない消化システムが,種にとって有利なことは言うまでもない。それではどのような差が,未消化物の量に影響するのだろう?

さてシマウマは,ウマや・ロバなどの仲間で,足の蹄(ひずめ)が奇数であることから奇蹄(きてい)類に分類される。一方,キリンはウシや羊などの仲間の偶蹄(ぐうてい)類である。

これらは有蹄類と呼ばれ、蹄を持つ草食動物である。かつてこれらの動物は,5本の指を持ち,森林に住んで軟らかい葉を食べていた。しかし地球の乾燥化により草原が広がり,そこでの生活を余儀なくされた。

さて草原での生活には,2つの問題がある。1つは肉食動物に襲われる可能性がある。もう1つは,硬く消化し難い草を栄養源としなければならない。

第1の問題に対しては,早く走って逃げることが求められる。そこで無駄な力を分散させるため指の数を減らし,同時に爪を硬くし蹄を作り出した。

第2の問題に対しては,特殊な消化システムを作り上げた。草食動物は,硬い草のセルロースを分解することができない。そこで腸内細菌の持つ酵素,セルラーゼを利用し草を分解しようとした。

そのため奇蹄類は,巨大な盲腸を作り出し,腸内細菌で発酵させる道を歩んだ。しかし盲腸には,落とし穴があった。栄養分のほとんどは小腸で吸収する。盲腸は,小腸の後にあるのだ。このシステムは,栄養源の吸収効率が悪いのである。

一方,偶蹄類は,胃を発達させ多くの胃(複胃)を作り出した。そのため,キリンも4つの胃を持つ。第1・2胃で発酵させたものを,また口に戻して噛み続ける。これを繰り返し,最後に第3・4胃へと送られ消化される。

すなわち反芻(はんすう)による消化である。この方法により,栄養を効率よく分解し吸収するシステムを作り上げた。

これでシマウマとキリンの糞の違いが解けただろう。未消化物が多いのがシマウマ,少ないのがキリンなのである。さて現在,地球規模で考えると,奇蹄類の種類や数は減り続けている。

一方,偶蹄類は,種類や数が増え続けている。この差は,反芻が作り出した消化システムの差と言える。つまり,セルロースを効率よく分解するシステムは,よく噛むことが必要だ。偶蹄類の繁栄は,歯が作り出したものなのである。

歯のふしぎ博物館
http://www.dent.okayama-u.ac.jp/syouni/OKAZAKI/omosiro/hun/hun.html

 

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